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【IT×他業種インタビュー】第1回:一般貨物自動車運送業 野々市運輸機工株式会社 代表取締役 吉田章様

こんにちは。Beta Computing株式会社の吉村です。

ITの活用がどの業界でも叫ばれるようになってから数年が経ちました。
しかし、現場レベルではまだまだ浸透しているとは言えず、活用しきれていないと感じることが多くあります。
その度に弊社は皆様にとってどのような存在でいればよいのか、兼ねてより、より具体的に価値を見出そうと考えておりました。

どのような価値を提供できるのか──。
どのような存在になれるのか──。


皆様が、どのような業務をこなし、どういった課題に直面し、どんな対策や取り組みを行っているのか、まずは知らなければならない。
であれば直接話を伺う方が正確で早いと、インタビューする企画を思いつきました。

IT×運輸業インタビュー

第1回目として取材させていただきましたのは、運送事業をメインに手掛ける 野々市運輸機工株式会社 の代表取締役である吉田章さんです。
よろしくお願いします!



大手がやりたがらないものをやる。そこにニーズがある。

──事業内容を教えて下さい。

吉田さん:
お客様にあった物流を提案させていただき、お客様にあった運送を行っています。 主に、北陸3県を範囲とした運送と北陸-大都市圏の運送がメインです。 様々な運び方がありますが、主力の1つに重たくて長いモノに特化した運送サービス"メタル便"があります。
全国に構成された運送ネットワークを使い、北は北海道から南は九州までリレーのバトンを渡すように目的地まで荷物をお届けしております。
メタル便は全国を網羅できるよう中小企業7社で作っています。

──7社はどうやって?

吉田さん:
メタル便の歴史は古く、2000年から開始されているサービスになります。
メタル便は長尺物や重量物を運送するサービスですが、この長尺物や重量物というのは大手運送会社が嫌がる荷物で、業界では「ゲテモノ」呼ばわりされていました。
大手が運送の対象物としなかったことで、それらを運ぶ需要が生まれました。
関東では多くの重量物が運ばれ、大阪では長尺物ばかり集まっていたようです。 「総合トラック」という会社が中心となり、関東と大阪をサービス圏にメタル便が開始され、それが2000年になります。
弊社は2016年度に北陸地域の運送会社として加入し、現在では7社となっています。


──メタル便をはじめてみて反響はありましたか?

吉田さん:
メタル便が利用できるからこそ商売を続けられる会社さんもいらっしゃいます。
メタル便として北陸地域に向けてDMをうった次の日の朝一番から「こんなサービスがあるのか!」とDMを握りしめたお客様が訪ねてきました。
「メタル便がなければ商売をやめていた」と言われたこともあり、お客様から求められていることを強く実感できました。

現在、働き方改革や2024年問題によりドライバーが不足しており、今後も需要が高まると予想されます。
さらにはガソリン高騰によって大手企業の費用も高くなっているので、メタル便に注目が集まっています。

──御社の強みをお聞かせください。

吉田さん:
北陸エリアでの混載・共同配送を得意としております。
また、メタル便では大手が引き受けない長尺物・重量物の全国運送を行っています。
その他では、大都市圏の大手企業が北陸まで荷物を運ぶのは手配の手間やコストがかかるということで、北陸に拠点(ヤード・倉庫)を作りたいという企業が増えてきました。
これまでは、高速道路の整備やトラックの普及が進み、地方の在庫が無くなっていき、東京や大阪に集約される動きでした。
ところが、長距離ドライバーの労働時間規制の動きが大きくなり、大手企業はコンプライアンス違反を気にするようになったため、地方に在庫を確保し工期に合わせて運送するような形に変わっていきました。それにより、保管業務の依頼が増えてきています。
弊社は機械等を運ぶだけでなく、お客様の工場内へ搬入し据え付けまで行います。
大型機械等の移動も専門に行っており、お客様の工場内にある機械のレイアウト変更などすることも可能です。


──お客様の業種は?

吉田さん:
製造業、建築業など、大きくて重たいものを運ぶ必要がある業種です。
機械装置や、鋼材・鉄・ステンレスの素材、木材など建築資材を運送します。

──現場の業務の流れを教えて下さい。

吉田さん:
現在40人ほどのドライバーさんがいます。ドライバーは長距離ドライバーと地場ドライバーにわかれます。
長距離ドライバーは北陸3県から大都市圏にモノを持って行く、大都市圏から北陸にモノを持って帰ってきます。
地場ドライバーは北陸3県内にモノを持って行きます。毎日日帰りになります。
長距離ドライバーは泊まりになることが多いです。1日かけて運送します。

──長距離ドライバーは県を跨ぐことになります。コロナの影響はありましたか?

吉田さん:
県を跨ぐことによる影響ですが、ドライバーは1人の時間が長いので、感染者もなく、県外には行くが他の人と触れ合う機会は少ないので感染者が出た等は特にありませんでした。
ただ、お客様の出荷が止まってしまったため、売上に大きく影響がありました。

──業務の中で課題はありますか?

吉田さん:
課題はたくさんあります。
外部環境としてコロナが落ち着きそうで落ち着かないことと、さらにはウクライナでの戦争も始まってしまいました。
原油高が非常に辛く、同じ距離(少ないくらいなのに)で昨年度より1千万円のコスト差が出ております。
どうしても外部環境の影響を受けてしまいますね。

社内では、直接のコミュニケーションを取りづらくなってしまいました。
飲み会や食事でのコミュニケーションが減り、細かな情報共有や社員の調子などわかりづらくなっています。
チームワークが重要であるのに、それを強める機会が減っています。

IT導入はスモールスタートが良い。受け入れてもらうことが大事。

──情報共有について、ITツールを使用していますか?

吉田さん:
ITや情報に興味があり、10年ほど前から会社の基幹システムを入れ替えました。
また、社員とのコミュニケーションでいうと、2018年に社内でスマートフォンを支給しました。
スマートフォンの普及が進み、父親60代でも使えているのを身近で感じたこともあって、全社員に渡しました。
一番の目的はチャットツールを利用するためです。

支給前の業務連絡は電話でを行っており、例えば、どこにモノを降ろしました、卸し終わりました、どこに向かっていますなど、社員みんなが電話を掛けるため、つながらないことがしばしばありました。
以前から電話での情報共有に不満があったので、業務連絡は基本電話禁止し、全てグループチャットでやることにしました。
つながらない、折返し、などの作業の無駄が無くなり、また、エビデンスとして残るようになったため、言った言わない問題も無くなりました。
注意事項の情報共有など、すぐに周知できるのも良いところです。

──ちなみに支給したスマホはiPhone?Android?

吉田さん:
通信会社から良い提案があったので、Android端末を支給しました。
格安スマホなどもまだ無かった中、ショップでは無理でしたが、通信会社と直接交渉したところ、安く提案いただけました。

──スマホを支給したことによる社員の反響はありましたか?

吉田さん:
60代社員でも使えており、業務中の電話がすごく減りました。
1人だけ64歳の人が3日たっても電源の入れ方がわからないと戸惑っていましたが、すぐに解決しました。
1週間で電話からチャットワークの体制に変更できたのは良かったです。

また、情報のやりとりがグループチャットになので、誰がどこで何をしているのかの会話が見えるようになりました。 当事者同士の会話が見えなかった以前は、あいつばっかり楽をしているではないか等の不満が募っていたのが、グループチャットだと他の人の苦労が見え、他人への不満が減りました。

──チャットワークを選んだ理由を教えて下さい。

吉田さん:
みんなが使いやすいシンプルなのはチャットワークかなと思い選びました。
使用に対する社員からの声は特にありません。ただ、何もないことは良いことだと思っています。

チャットワークにはAPIの提供があるので、それを利用していけばいろいろな情報を自動的に社員に発信できるようになります。 自分で調べながら工夫して進めています。
例えば、ありがとうカードをチャットワーク上で行えるようにしました。
ありがとうカードとは、他人への感謝を伝える取り組みになります。
ドライバーは孤独な作業が大半であり、会社で褒められることが多くありませんので、社員同士で感謝の言葉を紙に書いて社内に設置したポストに入れるようにしていました。 今では会社のカルチャーとなっています。
ただ、これまでに何千枚と紙が使われていた上、外出中のドライバーでも利用しやすいように、ありがとうカードをチャットワークに移行しました。
Googleフォームとスプレッドシートとチャットワークを連携し、自動で配信・集計するようにしています。
加えて、くじびき機能もつけて100分の1で当たりが出るという、少し遊び要素も入れています。

──社内・社員のITに対するイメージは変わりましたか?

吉田さん:
根本は変わっているわけではないですが、慣れていっていると感じます。
ITを勉強しているわけでは無いので、プログラミングできる人が増えましたとか、どんどんITツールを提案してくる人が増えたということではありませんが、ITツールを使いましょうということにたいしては受けいれてくれます。
コミュニケーションインフラとしてチャットワークもみんな利用してくれています。

現在、これまで紙で管理していたものがどんどん電子化していってます。
FAXをpdfで保存し、サーバーからGoogleドライブに自動保存し、自動でチャットワークに配信するようにしました。
FAXもできるだけ出力しないようにしています。
ただ、お客様側がFAXなので、現状は完全に無くすのは難しいです。

──業界ではITやIoTの活用は進んでいない?

吉田さん:
同業者はまだIT化が進んでいないと思います。
IT導入は、スモールスタートで費用をかけずに進めていって、ここから先は自分たちでは無理だと感じたときに本業のソフトウェア会社に依頼できるような流れが良いと思います。
自分たちで少しでもITを理解、挑戦していくことが必要だと思っています。
弊社としても同業者にITを普及させていきたいと考えています。

今後も積極的にITを活用していく。AI分野にも興味がある。

──新しいIT活用に興味・関心はありますか?

吉田さん:
興味がありすぎて・・・

Withコロナは今後も続いていくと思っています。
人が集まれる機会や時間が少なくなって、本来はもっと集まって社員教育やコミュニケーションを取れればと思っています。
現状は、社員教育をスマートフォンで見る動画のサービスを利用しています。
年に3回くらいの集合型もあったりしますが、まだまだ少ないと感じます。
最近ではそれが難しい時代と考えて進めていった方が良いと捉えるようになりました。
さらにITツールを活用し、社員教育を改善できればと思います。

また、現在は運送業とIT業のコンソーシアムに参加しています。
1日に百枚~千枚という数のFAXが届くので、紙から電子化をAIを使って自動化できないか実験を行っています。
FAXから自動で情報を取得というのは、AIが進化したからといって自由記述が多いとやはり難しいとわかってきました。
ですので、現時点ではソーター(仕分け作業)だけでも自動化できないかと考えています。

──今後、連携したい他業種はありますか?

吉田さん:
やはりIT企業ですね。
IT化進み、ITが現実空間を飲み込んでいると感じています。

様々なIT企業が物流業界に参入してきてますが、まだまだ攻略できてないのが現状だと思います。
どこもイニシアチブをとれたと言えるところまでは行っていません。

物流の全部は難しくても、セグメントでわけることで運送でシステム化をめざしていくといいのではと思っています。
メタル便はそれの一つになりうるかもしれません。

──以上になります。ありがとうございました。

吉田さん:
ありがとうございました。

野々市運輸機工株式会社様 連絡先

〒920-0211 石川県金沢市湊1丁目55番地23
野々市運輸機工株式会社
代表取締役 吉田 章
https://nonoichiunyu.com/

日本標準産業分類

大分類:運輸業
中分類:道路貨物運送業
小分類:一般貨物自動車運送業


おわりに

普段聞けない大変貴重なお話をお聞きすることができました。
業界の動向や、ITの取り組み方、ITに対する捉え方など、勉強になることが大変多くありました。
60代の社員がいらっしゃる中で、社内のスマートフォン導入がスムーズに進んだことは驚きでした。

吉田さん、お忙しいところインタビューを快くお引き受け下さり、本当にありがとうございました!

本内容が少しでも皆様のご参考になりましたら幸いです。
今後も他業種インタビューを更新していければと思いますので、次回をお楽しみに!