こんにちは、Beta Computing株式会社の村松です。
前記事に引き続き「競技かるた ONLINE」の裏話をお話いたします。
開発秘話
漫画「ちはやふる」をきっかけに競技かるたに興味を持った私たちですが、競技かるたのルールは漫画を通して把握しているつもりでした。また、アプリ開発にあたり競技かるたのルールをインターネットで検索していました。
そして、自分たちなりに試行錯誤し、「競技かるた ONLINE」の原型となるアプリを開発しました。
その後、たまたま会社の近くにかるた教室があることを知ったので、開発したアプリを持ってお邪魔させていただきました。 皆様に感動してもらえるのではないかと期待して、アプリをお見せしましたが、以下のようなご指摘を受けました。
- 札のフォントが公式札と違う
- から札の扱い方が違う
- 札押しの考え方が違う
- 決まり字の考え方が違う
- CPUの取るタイミングがおかしい
- CPUの定位置がおかしい
- CPUの送り札がおかしい
- 暗記時間やから札が出た際の時間の使い方が気におかしい
- 画面サイズ上25枚:25枚は並べられないのは仕方ないとして、友札を多くしてほしい
などなど
特にかるた教室に子どもたちの反応を見ると、ゲームアプリということで楽しそうに遊んではくれたものの、競技かるたという内容に対しては「ぜんぜんちがーう!」「えー!意味わからない!」という声が聞こえてきました。
更に、かるた教室の先生からは「あなた達は実際にかるたをやったことがないのではないか。まずは百首を覚えて、練習に参加し、大会に出なさい。」とごもっともなご意見を頂きました。 そこから、私達は1年以上かるた教室に通い、百首は当然暗記し、大会に出て少し勝ち進めるまでになりました。
漫画やインターネットで競技かるたのルールを理解していたつもりでしたが、実際に真剣にかるたに取り組んでみて、やっと当初の指摘の意味が分かってきました。
- 札は大石天狗堂様の札でないと取りづらい
- から札はルールとして必須、決まり字変化にも影響があり、暗記し直す時間にもなる
- 取り判定の厳密なタイミング
- CPUは決まり字が読まれてから取るべきだが、決まり字変化や残り枚数によってもスピードが変化するべき
- 定位置や送り札にも戦略がある
- アプリでは基本8枚:8枚の試合だが、決まり字変化を楽しむために、使われる札はランダムではなく、計算が必要
などなど
これらの経験や知識を反映させたものが、現在の「競技かるた ONLINE」でございます。 囲い手やフライング判定など、アプリ上ではどうしても再現させることができなかったルールもございますが、できる限り競技かるたのルールを再現するよう努力しております。
このように、インターネットでルールを理解したつもりで開発しましたが、実際のかるた競技者から見ると本質を理解できていないアプリだったということがわかりました。
全日本かるた協会様、各地域のかるた教室様、各大会で出会った選手様、大石天狗堂様、読手様等、皆様のご協力の上で開発することができたアプリです。改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。
なお、このエピソードは「競技かるた ONLINE」だけではなく、ソフトウェア開発やスマートフォンアプリ開発全般に通ずるものがあると考えています。
以降弊社では、スマートフォンアプリを開発する際は、アプリを利用される業種の勉強や、現場の調査を十分に行い、設計・開発するよう心がけています。どのアプリも関係者の皆様のお力を借りながら、開発しております。
開発費
前記事でもお話しましたが、弊社のメイン事業はソフトウェア開発の受託業務でございます。 受託業務の合間に自社製品開発として「競技かるた ONLINE」の開発を進めておりました。
「競技かるた ONLINE」は開発着手から初回リリースまで約1年半かかっております。 その間にかるた教室に通ったり、受託業務の合間にアプリを何度も修正したりということもございますが、単純な期間だけでいうと約1年半になります。
「競技かるた ONLINE」の初回リリースまでにかかった費用は主に以下の通りです。
- 人件費
- 読手様の音声収録費
- イラストデータの素材費
- BGM・SEデータの素材費
- サーバ費
- 調査や関係者とお会いするための旅費交通費
- 広告宣伝費
などなど
本来であれば多額の費用がかかりますが、各種補助金(小規模事業者持続化補助金、新製品開発補助金)を利用することで、約300万円の実費負担で開発することができました。
その他、サービス継続のために運営費としてサーバ費や保守対応費用がかかっております。
「競技かるた ONLINE」は会社の広告宣伝として、無料でかつ広告表示もできる限り少なくリリースしております。 ぜひとも弊社スマートフォンアプリ開発のBeta Computing株式会社を認識いただけると大変嬉しく思います。
終わりに
「競技かるた ONLINE」の開発や運営の裏話を中心にお話しましたが、私達も競技かるたを習って大会に出場することで、より一層競技かるたの奥深さと楽しさを知ることができました。同時に調査を進めることで、競技かるた界が抱える課題なども多く知ることができました。
弊社では「ちはやふる基金」「全日本かるた協会」「各大会への協賛」「地元かるた教室への貢献」等、少額ではありますが支援しております。
「競技かるた ONLINE」も競技かるた界の発展に少しでも役立つことを願って、開発と保守を続けてまいります。
もし弊社にご協力できそうなことがあればお気軽にお問い合わせください。 どうぞよろしくお願いいたします。