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【IT×他業種インタビュー】第3回:銑鉄鋳物製造業 日本海電化鋳造株式会社 工場長 立中得男様

こんにちは。Beta Computing株式会社の吉村です。
今回は、皆様がどのような業務をこなし、どういった課題に直面し、どんな対策や取り組みを行っているのか直接お伺いして取材させていただく企画の第3回目です!

IT×製造業インタビュー

第3回目の取材は、建設機械のカウンターウェイトを鋳物で製造する 日本海電化鋳造株式会社 工場長であり鋳造技士の立中得男さんと、若手社員の池田さんです。
本日はよろしくお願いします!



何十キロから何トンの鋳物を取り扱い、高い要求基準をクリアした高品質な鋳物が得意

──事業内容を教えて下さい

立中さん:
鋳物とは高温で溶かした鉄を型に流し込み、冷えて固まったあとに取り出す製法で作られる金属製品です。
鋳物の起源は古く、メソポタミア文明の時代からあったと言われています。鋳物は自動車、航空機、工作機械、産業機械から、身近なところで言えばフライパンやエクステリア製品などさまざまな場所に使用されています。

当社は鋳物でカウンターウェイトと呼ばれる重りを製造しています。カウンターウェイトとはパワーショベルやホイールローダーなど建設機械のお尻につき、重たいものをもったときでも前に倒れないようにするための部品です。

カウンターウェイトは鋳物と製缶ウェイトの2種類作り方が存在します。
鋳物は溶かした鉄を型に流し込むので丸い形、くり抜いた形など自由な形で作ることができます。また比重も製缶ウェイトと比べて高いので、薄くて小さい製品が容易に製造できます。
製缶ウェイトとは、鉄を曲げたり溶接などを行い、箱型の器を作った後に、鉄くずやコンクリートを入れて蓋をします。10トン20トンなど重いものを安いコストで製造できますが、形が箱型となるためどうしても直線的な形となりやすく、形状の自由度は鋳物に比べると劣ります。

──お客様はどういった業種でしょうか?

立中さん:
当社は建設機械を開発する企業様がメインの取引先になります。
数kgから数tのものまで幅広く製造しています。

──大量に発注されることが多いですか?

立中さん:
建設機械1台にカウンターウェイトが最低1つ必要です。
自動車部品は毎月数千から数万ロットとなりますので、建設機械はそこまで多くありませんが、少なくもありません。

鋳造業会社によっては同一製品を何十万個つくる体制の会社があったり、1品のオーダーメイド形式の会社もありますが、弊社は数十から数百ロット程度の微妙なロット数を得意としています。

弊社は万単位ではありませんが、1,2個ほど少ないわけでもなく、他の会社が嫌がるような微妙なロット数の中間部分、そこをターゲットにしています。

──御社の強みはどういったものでしょうか?

立中さん:
当社は自社の工場で製造する以外に、海外から相当量の鋳物を輸入しています。また他社(グループ会社など)が輸入をした鋳物の保管、検査及び手直しも行っており、当社で取り扱う鋳物の量は年間15,000t(自動車に換算すると1万台以上)程となります。カウンターウェイトのような大型の鋳物製品をここまでの量を取り扱える企業はなかなかないと思っています。

次に他の鋳物メーカーと大きく違うのは成形技術に特化していることです。鋳物は中に組み込まれることが多く、表面がざらざらのイメージがあると思います。 弊社では目に触れる場所の製品を作ることが多いため、ざらざらではなくつるつるのものを作ります。 高品質な鋳物を作る会社は多くありますが、外観に気を使う会社は少ないですね。



グループの強みを活かし、幅広い事業を展開しつつ、高い技術力や高品質な製品を提供する

──他業種との連携ありますか?

立中さん:
弊社は製造、建設、リース、機械加工、環境と幅広い事業を展開している音頭グループの1社です。
グループ内で連携をとることが多く、例えば、グループ会社の音頭金属には建設や建物の修繕を依頼することがあります。
音金機械には社内の部品加工用に鋳物の加工を、大和環境分析センターには工場の作業環境測定を依頼しています。

──グループ連携での良い面と課題など教えてください

立中さん:
グループ間の社員の仲が良いのでお仕事は頼みやすいです。価格や納期なども配慮してもらえることが多く、良い連携が取れていると思います。

課題については、あたりまえですが、業種や社風が違いますので、グループ全体で大きな物事を進めていくことが難しいと感じます。
実務担当だけでなく、マネージャークラスの横のコミュニケーションが活発になると、グループ全体で今以上に成長できるのではないかと考えています。

──現場の基本的な業務の流れを教えて下さい

立中さん:
鋳物はたい焼きをイメージすると分かりやすいと思います。
まず、たい焼きはたいの形をした鉄の型に生地を流し込みますが、鋳物も同様に型を作ります。当社ではそれを砂で作っています。砂には樹脂と硬化剤が混じっていて、時間がたつと固まります。そこから木型を取り外すと、砂でできた型ができます。
この型に、たい焼きでは生地となる液状になった鉄を流し込みます。鉄は1500度くらいで溶かします。冷えて固まった後、砂型を崩して中身を取り出します。

砂がこびりついているので、ショットブラストという小さい鉄の玉を打ち付ける機械で表面についた砂を取り除きます。
バリ(たい焼きの端のみみ)をグラインダーと呼ばれる工具(高速で砥石が回る)で削っていきます。
弊社の製品は大きくて形状もさまざまなので手作業で行います。この削り加減などが重要な部分です。
外観にできた凹凸やざらざらな面をすべすべにするため、パテと呼ばれるものを塗ります(ファンデーションのようなもの)。その後、サンドペーパーで均一になるように磨いていきます。 最後に色塗って完成です。

──出来上がりまでの期間はどれくらいになるのでしょうか?

立中さん:
製品によりますが、木型があれば3.4日程度で完成します。大きい製品は冷めるのに時間がかかったりするのでもう少し長くなります。平均して1週間から2週間程度となります。

──高温の鉄・・・特に夏場だと辛そうです

立中さん:
ほんとに現場の皆様には頭が下がります。
作業環境をよくしていくのは永遠の課題です。



鋳造は古くからある技術だが、データ化できない部分が多い

──現場ではどういった課題があるのでしょうか?

立中さん:
鋳造はメソポタミア文明の頃からある古くからの技術ですが、暗黙知的な箇所が多くあります。
一番は砂型の中から取り出したときに初めて製品の状態が分かるということです。逆に言うと取り出すまでは過去の経験などの予測で作っているということになります。

また、気温や湿度といった日々変化するさまざまなことを考慮して、機械の設定や、薬品の混合などを調整します。
道具の使い方についても目、耳だけではどうしても伝えられず、体で覚えなければいけない部分がありますので、後継者の教育にも苦労しています。

ノウハウをしっかりとデータ化し共有していくことが今後の課題と考えています。

──データ化ができないと後継者の教育も難しくなるのですね

立中さん:
安全管理の面でもデータ化はしなければいけないと思っています。
弊社は重量物や高温のものを扱うので安全が第一ですが、どうも今の若手社員たちは危険に対する意識が低いように感じます。
もちろん私達ベテランがもっと教えていかなければいけないのですが、過去の事例を語り部のように伝えていったところで、なかなかピンとこない部分があると思います。
そこで、過去の事故、怪我などをデータ化、見える化し事前に警告できる仕組みなど作れないかと考えています。

──その他意識していることはありますか?

立中さん:
毎日の朝礼で、私自身が日々感じていることから現在の会社の業績、お客様の動向などさまざまなことを伝えるようにしています。
昔は簡単な業務連絡や誰が今日休みかなど他愛のない話が多かったのですが、売上や利益など自分給料に影響の出そうな話をすることで、耳を傾けてくれる人が多くなったように感じます。

──以前kintoneを導入されているとお聞きしました。kintoneを選定した理由を教えてください

立中さん:
他社に比べ、導入費用が圧倒的に安かったこと、カスタマイズが容易だったことが理由です。

弊社は従業員45人の内、事務メンバーは5,6人になりますが、その人数ですら情報共有ができておらず、業務が属人化していました。
確認事項も各自のメモ帳の手書きキーワードを基に話をしていたり、古い紙のファイルを引っ張りだしてきたりととても非効率でした。
現場への伝達事項も人数分の紙を印刷して配っていたのですが、変更があった際に担当者に伝え忘れたりしてお客様に迷惑をかけてしまったこともあります。
これらの問題を解決するため、ITツールを使用し情報を共有していくことが喫緊の課題でした。
その中で様々なベンダーと相談しkintoneを選定しました。
これらの課題を解決するためにいろいろなベンダーと相談し、結果kintoneの導入を決めました。

Kintoneを使用し、売上、品質、図面などさまざまな情報が共有できるようになりました。まだ利用し始めたばかりですが、概ね満足しています。

──業務上でスマートフォンは利用しますか?

立中さん:
よく利用します。
基本はLINEを使用しています。口頭では忘れてしまうようなことでも記録として残りますので便利です。また不良品や設備トラブルがあった際も写真を送ってもらうことで、判断がスピーディーになりました。

──IoTの活用があれば教えてください

立中さん:
砂型に使用する砂を出す機械に活用しています。砂、樹脂、硬化剤の温度や使用量を把握できます。また機械のエラーが起こった際は症状などがすぐさまメーカーに連絡がいくようになっています。
自分たちが気づかないようなエラーも検知してくれます。
また、在庫状況もメーカー側で把握できるため、こちらが在庫を把握せずとも適切なタイミングでメーカーから注文の確認の連絡を頂けるので非常に便利です。
IoTが一段と進むと、流通だけを担っているような商社様は生き残っていけないのではないかと感じています。

ITを活用したいという思いはあるが知識がない。導入費が大きいとハードルも高い

──IT活用に抵抗はありませんか?

立中さん:
1年前から給与明細をクラウド上で見られるようにし、年末調整も従業員自身がWEB上で入力する仕組みを導入しました。導入検討時は、年配社員の混乱、抵抗があるのではないかと心配しましたが、まったくなかったです。
年配の方たちも、ITが便利なことは分かっていても使い方が分からないだけなんだと思います。そこは導入時に丁寧にフォローすることにより、とてもスムーズに進めることができました。

今後は生産管理システムの導入などを検討しています。現場の人たちがいつでもタブレットなどで、生産計画、納期、図面、品質の注意事項など見ることができるようにしたいと思っています。

──ITの知識や活用について我々ももっと提案できるようになる必要を感じています

立中さん:
IT、特に何かシステムを導入しようとした場合、初期投資が大きい割に、費用対効果がダイレクトで見えにくいと感じます。
業務において、煩わしさを感じてはいるものの、そこまで費用をかけてやる意味ある?と思われることが多いです。
更に導入費用も数百万を超えるものもあり、失敗したときのリスクを感じるとなかなか導入に踏み切れません。やはり小さく初めて育てていく方が当社の規模のような会社には合うのではないかと感じています。

その点、kintoneのようなサブスク形式のものはすごく助かります。もし合わないようなら簡単にやめられますので。
あと、ITベンダーの方には補助金の情報やサポートをもっとしてほしいなと思います。IT導入補助金などありますが、自分たちで資料を揃えて一から申請はなかなか大変です。費用がかかっても手続きを代行してほしいというニーズは多いのではないでしょうか。

──最後に、読者の方へのメッセージをお願いします

立中さん:
弊社は国内外の多数のネットワークで数kgから数tまでの鋳物を年間1万5千トン取り扱っています。今後はIT活用をさらに進め、デジタルとアナログの融合を果たすことで高品質、低価格、短納期を実現させ、さらなる成長と発展を行っていいます。
鋳物のことでお困りごとがございましたらぜひ弊社にご相談ください!



──以上になります。ありがとうございました。

立中さん:
ありがとうございました。

日本海電化鋳造株式会社様 連絡先

〒929-0319 石川県河北郡津幡町能瀬ホ68
日本海電化鋳造株式会社
代表者 音頭 栄美子
http://www.nihonkaidenka.jp/

日本標準産業分類

大分類:製造業
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